2010年02月28日

もっとも危険なゲーム 感想 ギャビン・ライアル

もっとも危険なゲーム (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 18-2))
菊池 光
415071052X



ギャビン・ライアル作品三冊目の本作品の舞台は北欧フィンランド。
「深夜プラスワン」はフランス、「ちがった空」は地中海地域を舞台にしていたので、ライアル作品は一作ごとに舞台となる地域が変わるみたいですね。

今回の物語は贋金製造を巡る陰謀劇を背景にしながらも、そうした世俗に塗れた世界とは一つ違う独自の世界に生きる屈折したプロフェッショナル二人の決闘がメインとなっています。
タイトルの「もっとも危険なゲーム」というのも、まさにこの決闘をピンポイントで指しているわけで、謂わばラスト数十ページの決闘シーンのために贋金製造のサイドストーリーが存在していると言ってもたぶん間違ってないでせう。
戦後間もない時代が舞台だけに、大戦中のエピソードも物語に多少関わってきますけど、あくまで時代背景を演出するための舞台装置でしかないし。

決闘シーンへの導入と、息詰まる戦闘、そしてプロフェッショナルらしい結末に到るまでの流れが素晴らしいだけに、少し尺が足りない気がします。
決闘だけで全体ページの1/3位使ってもよかったかなあ。どこかのスナイパー小説の御大ならこれだけのネタがあれば上下分冊にして下巻まるごと決闘に費やしそうだ…そこまでやって欲しいとは思いませんけども。


「ちがった空」の時も感じたのですが、ライアル作品は舞台となる土地の雰囲気を代表する要素を抜き出して端的に描写する事で読者のイメージを刺激するケースが多い様で、今回の作品もフインランド=森と湖の国というイメージを最大限活かした描写がなされていました。
活字を追っているだけで無意識のうちに頭の中に絵が浮かぶ作品と言うのは意外と少ないだけに貴重ではないでしょうか。




posted by 黒猫 at 18:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 冒険 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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