ドイツ軍の装備で武装した日本が太平洋戦争を…というコンセプトの、某軍板あたりのドイッ厨ラント人の妄想をかき集めて魔女の大鍋で一昼夜煮込んだ様な仮想戦記。
ただし、作者があの三木原メイドスキー御大である点からして、ただ単にアジアのアーリア人を気取りたいだけのドイツかぶれな軍オタの自慰的小説に終止するとは思えないって事で読んでみました。
1巻はオーソドックスに真珠湾攻撃を扱っていて、さんざん煽られているドイツ軍の装備とやらはまだ出てきません。いや、最後の章の方にかなり予想の斜め上を行った代物が出てくるには来るのですがそれは後述。
ともあれ真珠湾。作中世界の日本はアメリカとの関係こそ戦争状態突入ですが、オーストラリアとは独立戦争に協力した関係で比較的友好、日露戦争に敗北した事で大陸には権益をもっておらず、泥沼の日中戦争もなければ満州国も無い(代わりにソ連が満州国を建国している)。
つまり、開戦時点では日本は対米戦にのみ集中出来る態勢が整っている。イギリスの動きが今ひとつ見えませんけど、これは上記の斜め上なドイツ軍装備を日本に運ぶ道中で戦う事になるとは思います。
兵器レベルでも小さな改変がなされていて、零戦が金星エンジンを搭載して速度重視の一撃離脱を得意とする戦闘機に改変(燃費の悪い金星を積んで、機体強度も見直して…とやると艦上戦闘機として必要なだけの航続距離を稼げるかどうかは気になるが)されていたり、豪州独立戦争で共闘したアメリカのブローニング.50口径機関銃を国産化して装備していたりとか。
史実に比べるとレーダーの技術が若干進んでいるのも気になります。
そして本命はドイツからの斜め上な贈り物…なんと総統から戦艦ビスマルク以下数隻の艦艇を委譲してもらうという無茶なんだか三木原氏らしいというべきか悩む装備品。
本来だと海軍は日本海軍の方が充実しているので、どちらかというと弱点である陸戦兵器を供与してもらうという展開が一般的なのに、敢えてビスマルクとか臍曲りすぎるだろ…。
改変ポイントはそんな感じだけど、1巻の一番の見所はやっぱり源田実の盛大なドキソぶりにあると思う。作者曰く嫌な上司とでも思って読んでとの事ですが、うーんなるほど(笑)。まさに嫌な上司に対して時々妄想してしまうことを作中で克明に描ききってやがる。三木原御大やるなあ。
個人的には源田氏にはもう少ししぶとく生き残ってもらって引っ掻き回して欲しいかなとも思ったけど、そんな事したら勝てる戦も勝てなくなるので、この始末のつけ方でベターかも。
なおこの作品世界にもあの社会主義がナントカスキーでマルクスとレーニンがぶははははな小説と、謎の作家曲垣武雄氏は存在しています。