芳住 和之
誰かのリビングデッド第2巻。相変わらず堅調な面白さを維持しています。
今回はデルがまだ人間だった頃深い縁のあった人が登場したり、1巻冒頭でちよっとだけ触れられていたプラスの兄弟子?が登場したりと何やら賑やかに。
サブタイトルの「愛情」ですが、この2巻には3つの愛情が錯綜しています。
まずは兄弟子オールトのプラスに対する溺愛ぶり。ブラコンと言うかなんと言うか、まあ傍目から見たら変態一歩手前でしかないんですけどとにもかくにも愛情には違いない。すぶずぶに爛れていてたとしても。
続いて生前のデルと縁の深かった女魔法使いプロシュミと、彼女に想いを寄せる青年マシューの純愛劇。終盤の決闘シーンでのこっぱずかしいやりとりは読んでて赤面しそうなものはありましたが、マシューのひたむきな想いだけは重々理解した。
そして三つ目の愛情はというと3巻へと繋がっていく話なんだろうけど、店長のもと同僚である魔法使い『最果て』の魔女に対する偏執的な愛。
これらの愛情を優劣無しの等価として描いているのは海原先生らしいと感じた。
もともとハードボイルド気質のある作風の先生ですからして、第三者から見て歪んでいようとドロドロだろうと、本人が確たる思いの下にやってる事ならそれは一つの信念に違いないと言うことか。
愛情がトラブルを引き起こし、愛情でもってそれを収めるというなんとも因果な展開ですが、きっと世の中なんてそんなもんだろうと思う。
なんか3巻に向けて伏線を貼りまくる事がメインだったため、デルを作り出したマスター探しに関しては保留状態に近いですが、そこは完結編の楽しみとしてとって置く事にします。