旭日の鉄騎兵 満蒙に吼ゆ! (歴史群像新書)
日本戦車のもう一つの発展史としてスタートしたと思われる本作品もこの巻でひとまずの完結。
日本の戦車にとって一つの転換点となりえた歴史的事件…ノモンハン事件を起点として、史実とは違った戦車の進化を、欧州や中東での戦いを通して描いてきた本シリーズですが、完結編となるこの巻では舞台は再び満蒙はホロンバイルへ。
全てが始まった地で、それぞれ別々の進化を遂げてきた3つの国の戦車が激突すると言う趣向。
第二次世界大戦に登場した戦車を恐竜的進化させたドイツのエレファント駆逐戦車。
機動性と量産性能に主眼を置き、三者の中では一番史実の戦車に近いソ連のT52。
そして二巻当時に登場した車両ではあるものの、複合装甲と新開発の砲弾を装備してアップグレードされた日本の一〇式戦車。
個体の戦闘力としては、機動力を切り捨てて一〇式の砲に耐える装甲と一〇式をアウトレンジ出来る火力に特化したエレファントがあまりに圧倒的な印象があったが、上記のようにエレファントは基本的にWWU当時の技術の最終発展型。一応照準装置に新技術が使われているとは言え、車体設計そのものはもうこれ以上発展の余地が無い。
対して一〇式はというと、エレファントの砲弾を数発受けると撃破されるし、その火力もエレファントの装甲を貫徹することは出来なかったが、ボルトオンで取り付けできる拘束セラミック複合装甲や世界に先駆けて開発された新型砲弾など技術的にはに1〜1.5世代上を行っており、更なる発展の余地を感じさせるものではありました。
もっとも、1950年代にセラミック複合装甲はチートな気がする。
セラミックの持つ特性として、原子間の結合力が強く亀裂の成長速度が侵徹される速度よりも遅いため、侵徹体の運動エネルギーの大半を消耗させることが出来る云々…といった原理の解説はなかなか面白かったけど。
基本的に戦車オタが書いた戦車小説と言う感じで、狙っているレンジの狭さは強く感じるが、ピンポイントな人にはとことんピンポイントな作品だったように思う。
もちろんそのピンポイントが自分自身だったのは言うまでもないですが。
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