南極に基地を構えたナチスの残党、イスラム過激派との関係、ナチスと言う共通の敵を前にしての米ソ(作中時間は1980年代)の打算…こうした諸々が、作者のかなり誇張されたナチス批判とユダヤ擁護、今となっては時代の徒花としか言えないウーマンリブ思想などの開陳にページを食い潰されてしまって、気がつけばほぼ全ての伏線が未処理のまま投げっぱなしEND。
これはつらい。
欧米ではことナチスとなると無茶な感情論が平気でまかり通るらしく、「ナチスはユダヤ人を根絶やしにする目的で誕生した」とか平気で書いているところに戦慄した。
その超理論で言うと「イスラエルはパレスチナ人を根絶やしにする目的で誕生した」とも言える。しかし作中ではその辺は一切スルー。ナチとジューに関しては自由の国アメリカですら検閲や圧力が存在したりするのだろうか。
ユダヤ人かわいそう!女権拡大!などと博愛精神を喧伝しつつ、太平洋戦争当時の日本をジャップとおっしゃる超ダブルスタンダードぶりにもおののく。まあアレだ、ジャップとやらは人間じゃないらしいから「人種」差別に該当しないとか、そういう類のギャグなんだろう。
珍書・奇書としても内容が中途半端すぎていまいち笑えないし、なんだかなー、と言う一冊でした。
南極上空応答せよ (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)