この巻でいよいよ完結となった『本の姫』。
正直なところをいうと、この作家さんは1巻完結で書く方が持ち味を活かせるのでは無いかと思う。文字集めについても描きこむ部分と端折る部分との落差が大きくて些か物足りなさを感じた。
作風最大の特徴でありセールスポイントでもある緻密に張り巡らされた伏線に関しても、全てをすんなり把握するには全4巻は些かボリュウムがありすぎる。
もちろんこれは自分の様に次から次と本を読む人間にとっては伏線確認のために再読するには分量が多いと言う話であって、普通に読む向きの人にとってはまた違った話だとは思いますが。
本編はと言うと、ラストだけあって全てがあるべき場所、あるべき形へと一気に収められて行った感がありますが、レッドの処遇がアレでいいのかなあとやや釈然としない点も。
もちろん物語の公式の中ではあれ以外無いという結末だったんですけど、読者の心情的にはちょい甘くないかと言う話で。
逆に思わせぶりに死んで、最後まで死んだままだったウォルターは…。
やや不満点もある一方で、アザゼル達の時代ととアンガス達の時代を繋ぐ姫の存在に関しては上手く予想の一つ斜め上を行っていてこの発想はなかった…と感心した。
SF的手法としては禁じ手に近いものではあれど、ファンタジーならこういうのも充分許容範囲でしょう。見事にみんなが幸せになる(極一部除く)締め括りに持って行った訳です。
このラストを踏まえると全四巻と言う分量は、余韻に充分な味わいを与えるのに必要な熟成期間だったと考える事もできる。むしろ全2巻程度だとこのラストは唐突に感じてしまうかも知れない。
しかし上記のように分量的に気軽に読めるというものでもなく、なんとも悩ましいです。
それでも何だかんだ言いつつ作品として楽しめたのは間違いなですけどね。