2009年11月28日

誰かのリビングデッド 1巻 "不浄" 感想 海原育人


元ホームレスの少年とフリーターの少女が、ふとした事で拾ったリビングデッドの青年を巡る騒動に巻き込まれていくという筋書き。巻き込ま型のストーリー展開は前作ドラゴンキラーシリーズにも通じるものがあって、どうやら作者さんお得意のパターンみたいです。
そういえば前作の主人公ココも世間的ヒエラルキーでは下の方に位置するポジションでしたけど、今作の主人公もまた。
エリート萌えブーム蔓延るこのご時世に、真逆を行こうとする作者の姿勢はココや店長以上にハードボイルドだ。


上でホームレスだフリーターだと書いたのですが、一応はファンタジー世界の物語です。
本当に一応は、という感じですけどね。文明の進歩具合や魔法の存在など舞台設定はまっとうなんですけど、登場人物の設定は何かと現代の社会を暗喩しているようで、「小間使いとして働いていた先から逃げ出してホームレス化」「定職に付かず気ままに生活」「主に捨てられた生きる屍」とかなんとも香ばしすぎる。
会話から感じ取れるメンタリティも現代人のそれとほぼ変わりないもので、深読み&無駄読みしようと思えば出来るのは間違いないんですが、まあ別に無理に深読みしなくても充分楽しい作品なので問題はないかな。


個人的には前作ではハードボイルドとピカレスクが些か混同気味だったのが気になっていたのですが、この作品ではその辺りの部分がかなり修正されているのが嬉しいところ。
畑の作物を盗もうとしたホームレス少年のブラス(主人公)を拾ったパン屋の店長は、30年前世界を統治していた魔女を殺害した"不浄"と呼ばれるネクロマンサーだったりする訳ですけど、魔女を殺害した理由から猛烈な固ゆで匂が漂っていてカッコイイ。例え自分の行動の結果が世界を戦乱に叩き込む事だとしても、自己の規範だけは曲げない。これぞハードボイルドという感じ。
もっとも、店長の店はは硬ゆで卵じゃなくて固焼きパンが名物らしいから、ハードグリラー(ベーカーか?)とでも呼んだ方がいいですかね。
ところで何かと気になる店長の幼女フリーさんですが、1巻巻末でブラスたちはリビングデッドのデルのマスターを探す旅に出てしまうので、2巻以降は出番無しですかあ?
微妙にテンポのずれたキャラクター性が好きなんだけどな。


誰かのリビングデッド〈1〉不浄 (C・NOVELSファンタジア)
4125010358




posted by 黒猫 at 19:21| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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