ファンタジーにロボットという組み合わせそのものは決して珍しいものでは無いんだと思うけど世界観が結構独特で、守護機と呼ばれるロボットは所謂魔法の力とか太古の超科学とか言った類の力の上に存在しているのではなく、現在進行形で生産配備されている…つまりかなり科学の水準の高い世界でありながら、平民と貴族との間に絶対的な身分差が存在する中世的な世界でもある。
しかも1巻時点では仄めかす程度にしか書かれていないものの、複数の異なる世界が多元的に存在する設定も感じさせるものがあり、相当にスケールが大きな物語と思われます。
ロボットの操縦描写に関してはかなり現用の航空機を意識したものになっていますが、著者の水月さんは夏見正隆氏の別名義らしいので、なんとなく納得。
そう考えると、露悪的に描かれた極端な身分制度なども、「レヴァイアサン戦記」当時から夏見氏の作品に漂っていた強烈なルサンチマン精神の延長上にあるのかもしれない。
それなりに派手なロボットアクションもさることながら、比較的真っ直ぐな主人公の少年リジューを取り巻く大人たちの生臭い事情もしっかりと描かれていて、本人の意思不在のままどんどん深みに嵌っていく展開はなかなか面白いです。
特に1巻で描かれる事件で死亡した?ディオデイト家の子息エミュールの代替として、家人達によって当主に祀り上げられてしまう展開は強引ながらも一応の説得力(ディオデイト家が途絶えると家人たちは職を失うので、彼等の生活の為に偽者を演じる事を余儀なくされる)があってよかった。
また、一応は中盤で死んだ事になっている模様のリジューの父に関しても、おそらくは意図的に状況をぼやかしていて実質的には生死不明状態なのが非常に先を読みたい気持ちにさせてくれる。
所謂ハイ・ファンタジーの様な硬派さがある訳でなく、作中世界の技術の描写に関しても甘いけど、物語を読ませるという点に関してはかなり巧みだと言わざるを得ないです。
護樹騎士団物語2 感想
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鈴木 理華