スタートは良かったのに…という作品の典型例。
リングワールドふたたびに登場した機械種族の女性、ヴァラヴァージリンを主人公にして、リングワールドで暮らす他の種族と共に吸血鬼退治に向かうという、外伝的な展開でスタートした本書。
SF路線と言うよりはファンタジーに近い展開ながらも、リングワールドで生まれ育った人たちの姿を内部の視点から見れると言う事で期待して読み進めていたとですよ。
したら、いきなりルイスの話に飛んで、ハインドモーストは変な踊りを踊って、ハミイーは隠居して?息子が出て来て、なんぞこれ状態。
終盤は地球やクジン星の艦隊がリングワールドに侵略してきたり、プロテクターが多数存在するインフレ状態になったりしてまとまりの悪いまま終了。
作者が描きたいものは理解しなくも無いのですが、幾つかの独立プロットを無理矢理1つに纏めたという感じで非常に構成が宜しくないです。
なんでも元々吸血鬼アンソロジー本の為に書いた中篇(序盤のヴァラが主人公の話)を元に、あれこれと付け足して長編に仕立て上げたとかで、その時点で失敗フラグが立っていた気がしなくも無いです。
むしろヴァラたちの大冒険に特化して加筆した方が素直に楽しめたと思えてならない。
リングワールドは壮大な世界だけに、ルイス達とは別の視点で描き出せる余地が相当あると思うのですよ。
それこそクトゥルフ神話みたいに基本ルールを決めた上で複数作家で描いても描き足りないくらいに。それだけに、ルイスやハインドモーストの登場は逆に世界観の広がりを阻害した感もあり、ちよっと残念な印象ばかりが残りました。
ま…こう言う事もあるさ。
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