
地方の水郷の街を舞台としたホラー風味の物語。
導入部こそ街で続発する不可解な失踪事件というミステリー風味のものですが、中盤から一気にSF的要素を含むホラーに。この中盤の正体不明目的不明の存在を巡る展開がとにかく怖い。
それは水に同化して人を"盗む"存在の怖さでも、盗まれた人間が人間のような何かに変えられてしまう事への怖さよりも、一体何が目的で人を盗むのか、そして盗まれた人間はどうなってしまうのかという未知への恐怖が大きい。
いつの間にか住人が人間以外の何かに変わってしまった街という設定はわりとよくある設定だし、不定形のモンスター?だって格別珍しいものではありません。
そこで、敢えて恐怖の軸足を事象そのものから先の見えない不安感の方に移したのでしょうけど、それが成功していますね。
反面、終盤でのある程度(あくまである程度であって全てではないのがポイント)種明かしがなされてしまってからの展開は恐怖感というよりは不条理感の方が勝ってしまった気がします。
町の住民が消えてしまった事に対する自治体レベルでの反応(伝染病の疑いによる隔離)も何か釈然としないものがありましたし、それ以上に特に最大のギミックである多聞の存在が、結果的に恐怖間を打ち消してしまった感は否めない。
もちろんそれも計算ずくで、敢えて釈然としない事象を積み重ねる事で不条理感を煽っている可能性もありますが。
さて。
なお、元ネタは作中でも言及されている「盗まれた街」という海外小説だそうです。
こちらもそのうち読んでみたいですね。