
第二次世界大戦以降勃発した主だった戦争の中から空中戦にのみ焦点を絞り、戦後の航空機の発展史を俯瞰した一冊。
当たり前の事だけど戦後の軍用機についてはほぼ米ソの独壇場に等しく、それにフランスがかろうじて続いているという具合。
戦後のいわゆるジェット戦闘機は、大戦機に比べるとやや人気が落ちるきらいがありますが、これはきっと第二次世界大戦の僅か5年強の間に猛烈な勢いで世代交代と進化を繰り返した密度の濃さに原因があるんだろうなあと思っています。現代の戦闘機は初期型が生産されて以降改良に改良を重ねながら30年以上使用されているものも珍しくなく、それだけに変化が乏しいものに感じられてしまうのは否めない。
しかし、この本で取り上げられている、朝鮮戦争〜フォークランド紛争までの期間のジェット機については、第2次世界大戦におけるレシプロ機以上の、それこそカンブリア紀の生物大爆発にも等しい多様な進化を遂げているのに気付かされます。
シューティングスターやサンダージェットとF-15では、それこそ複葉機とP-51以上に設計思想にも運用思想にも隔たりがあって、大きな戦争こそ無くても断続的に勃発し続けた地域紛争を通して各国が常軌を逸した開発競争に邁進していのが感じられる訳です。
そういう事で、現代ではミリタリーマニアにしか余り馴染みのないゴールデンエイジの航空機達に思いを馳せる事ができる貴重な本書。個々の戦争や飛行機に対する掘り下げは深くありませんが、ジェット戦闘機なんてみんな同じ様な形で退屈だと思っている人にこそ読んでもらいたい。
なお、80年代以降のジェット機がどの国の機体もほぼ似通ってきた(双発双垂直尾翼もしくはカナード付きデルタの2パターン)のは、ある種の収斂進化です。陸戦兵器と違って国土の事情にあまり左右されない航空機は、どうしても進化の果てには没個性の領域にたどり着いてしまう宿命があるのかもしれません。