2009年09月02日

仮装巡洋艦バシリスク 感想 谷甲州

仮装巡洋艦バシリスク (ハヤカワ文庫 JA (200))



航空宇宙軍史シリーズ実質上の第1巻。といっても時系列は作品によってバラバラに書かれているので、必ずしもこの巻から読む必要はないと思います。亜光速航行が実用化された世界では、人間が感じる時間の概念なんて我々が今生活している現代に比べると随分曖昧なものになってはいますし。


第1作目の『星空のフロンティア』や、戦闘艦ヴァルキリーとそれに関わる人たちの姿を描く2編は、人類の生活圏の拡大とそれに伴う内乱の発生を描いた作品で、所謂典型的なハードSFの世界となっています。
衒学的な専門用語が飛び交うので、そうした用語の嵐に浸ることで陶酔できる人、或いは用語は概念的な部部の理解に留めて物語の筋を追える人じゃないとちよっときついかもしれない。

そういう意味では良くも悪くも「SFを殺したSF」である事は否めないが、しかし単なるひけらかしの世界で終わらないのがこの谷甲州という人の凄さです。
一見ベタベタの理系作品かと思わせても、物語の中心には常に人がいて、人の意志の力でもって作品を展開させている。理系の外骨格を纏いながらも芯の部分には文系めいた要素もしっかりと息づいていて、だからちゃんと読めば脳の構造関係無しに味わえる稀有な作風ではないかと思ってみたり。
表題作の「仮装巡洋艦バシリスク」に至っては、もしかすると何らかの論理的な説明が付く続編が存在するのかもしれませんけど、仮にそうだとしてもこの作品内で描かれた不可思議な精神世界?と、極限状況における人間の強固な意志の姿を何ら損なうものではありません。
なんとも狐につままれたような読後感ではありますが、その不条理感がまた宇宙という未知の世界と化学反応を起こして名状しがたい味わいを演出しています。



posted by 黒猫 at 15:15| Comment(0) | TrackBack(0) | SF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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