
まだまだ続くよハワイ上陸戦。
武蔵の仕組まれた特攻という大ハッタリをかまして読者の度肝を抜いたくれた本作品ですが、しかし実質的な戦闘の方はというと、大量の鉄と火薬(と人命)を磨り潰しつつ着実ではあるけど緩慢に進行中という感じ。
日米共に投機的な要素は少なく、ガチに戦争してるのだから消耗戦の様相を呈してしまうのも当然といえば当然ではあるのですが。
ともあれ米軍はついに橋頭堡を築く事に成功し、いよいよ陸戦が始まろうかという緊迫感が漂い始めたのが良い。
1万メートル以上彼方の相手と巨砲で殴りあうのもまた良いですが、相手の顔が見える様な距離で原始的な戦いを繰広げる陸戦には人間の本質部分に訴えかけてくる何かがあります。
この巻ではただでさえオーバーテクノロジー気味の四式戦車に、74式戦車とメルカバ戦車の放蕩を載せた試作型なんかも登場して、鋼鉄成分が高まってきた!滾る!
思わせぶりに登場したバロン西の扱いも気になります。史実では硫黄島の戦いで英雄視されている人物ですが、アメリカすら赤化させるヒネクレ度数を誇るメイドスキー先生が素直に大活躍させたりするとは思えない。
まして、赤化大好きメイドスキー先生的にはおそらく悪しき階級社会の象徴でもあろうバロンの出自を考えると、死亡フラグが確定しているのかとすら思える。
…とは言え、残念ながらまだこの巻では戦車の本格的な出番ではなく、戦場の神――砲兵の戦いが中心。
砲兵そのものより弾着の観測を担当する側にやや比重を寄せて描いているバランス感覚は絶妙で、観測班あっての火砲というのが判りやすく書かれていたりしてそれはそれで愉しいのですが、やはり男は鋼鉄の車でドツキあってこそのもの。戦車戦が待遠しい。