僕僕先生 (新潮文庫)
仁木 英之
玄宗皇帝時代の唐を舞台に、ニート青年とボクっ娘神仙が繰り広げるロードノベル。
正直言うと最初は結構退屈でした。物語の流れが何処へ向かおうとしてのかさっぱり見えなくて、旅を通してニート青年王弁の成長を描くものかとも思ったのですが、確かにその要素はあるものの決してそれがメインと言う訳でもなく。最後まで作品の主題はよく見えなかったというのが第一の感想。
ただ、作品そのものとして面白いなと感じたのは、ファンタジーと歴史とライトノベルの要素を高次元で融合させる事に成功している事で、特にライトノベル的なラブコメ展開とは全く相容れない上に、客層も完全にずれている筈の歴史要素を巧く取り込んでいるのには脱帽。
基本ラノベは甘くてナンボであり、歴史要素なんて「こまけぇこたあいいんだよ!!」とか「歴史なんかどうでもいい、えーいラブを見せろ!」とか「歴史オタうぜえwwwww」と言った感じで嫌悪される部分だったりするのですが…。
物語としてはまだ面白いともなんとも言いがたい部分はありますが、作品としては実によく練られた造りで、それだけで充分楽しめるのはいいですね。続編も出ているみたいなので、物語としての面白さはそちらを読んだ上で判断したい。たぷんこの「僕僕先生」は1冊丸々プロローグみたいなものだと思うし。
ところで僕僕と王弁の関係は某素人童貞行商人とケモノさんに似てなくも無いです。
面白い事に刊行時期もほとんど同じで、かたやラノベと歴史を、かたやラノベと経済をと共に変化球勝負なのが興味深い。同時期にこのような作品が出現した背景に何かあるのか、ちよっと気になる。