
悪魔のミカタ(11)
これ悪魔のミカタなの?と首を傾げてしまうくらいに作品の雰囲気が違う11巻。
主人公である筈のコウは全く登場しないどころか(ある少年の語る"伝説"には名前だけ登場する)、アトリや小鳥遊、真嶋と言ったメインキャラクターも全く登場せず、かろうじて普段は影の薄い舞原サクラが登場はするものの、狂言回し役ですらなく、つまるところ外伝か別の作品かと思ってしまう訳です。
とは言えこの流れは前巻ラストからの「ザ・ワン」編である事は間違いなくて、いわばプロローグにまるまる一冊使ったと言う前代未聞の超展開。
しかもページ数もなかなかのもので、一般的なラノベよりは三割り増し程度のボリュウムだったりします。
うえお先生のヒネクレぶりは相変わらず凄い。
プロローグとは言え単品でも楽しめるくらいに物語の構成はしっかりしていて、和歌丘を襲ったザ・ワンの脅威を吸血鬼モノとゾンビモノを融合させ、そこにうえお風味の捻りの効いたスパイスをふんだんにぶっ掛けたような独特の味わいの群像劇で描き出しています。
ザ・ワンが意識の集合体の様な存在であり、全にして個・個にして全であるだけに、実はこの特定の主人公の登場しない群像劇的な描き方は正解かも知れません。
なにせ今度の戦場は和歌丘そのものですし、ザ・ワンにあがらう者達もまた人間の矜持という意識のもとに集合した存在でないと、この相手は一人でどうこうできるものでもなさそうですし。
うん、とか言いつつ次の巻でコウがちぎっては投げーのちぎっては投げーのやっちやう危険性も、もちろんある。なにせうえお先生だけに、読者の期待の斜め上を衝いてくるのはよくあることですからね。
面白いのは間違いなく面白い巻だったけど、次の巻の展開如何で評価はどの方向にも転がりそうだなあ。
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