2009年06月27日

稲妻6 感想 坂本康宏

稲妻6
坂本 康宏
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人生に絶望し、自ら死を選んだ男が巻き込まれた数奇な運命。

所謂マスコミ用語で"負け組"と呼ばれる類の人物を主人公に据えて熱い物語を展開させるのは、過去作品である歩兵型戦闘車両OO逆境戦隊×に通じるものがあります。
しかし本作品の場合は、主人公尚人に対しては、変身ヒーローであると同時にモンスターでもあるという悲劇性の高い宿命を課し、これまでの作品に比べると全体的にシリアスで重い雰囲気が漂っているのが特徴。
自分の中に潜む怪物をなんとか飼い慣らす事でヒーローと怪物との間の際どいバランスをとっているだけに、全体的に押し殺した様な筆致で描かれているのも作品にマッチしています。


大筋は昭和の仮面ライダーを意識しているのだと思いますが、(表紙のイラスト的にはハカイダーに似てなくも無い。アメリカンバイクで最終決戦に向かう姿とか、雨宮ハカイダーをイメージしてしまうなあ)モンスター化する原因が寄生虫だったり、ある島の出身者だけがその寄生虫を持っていたりと言った設定は最近の某ひぐらしを連想させるものも無きにしろあらず。
また、寄生虫が原因で変身し、腕には刃が生えているところなどバオー来訪者を髣髴とさせるものも。
実際のところその辺影響があったのか無かったのかはよく判りませんけど、SF的にはこうした元ネタ探しも楽しみの一つだったりする訳です。


ところで作品の舞台は例の如く愛媛県内なのですが、今回の作品は過去に無く地域色が強くて、他県の人には少しわかりづらいものがあるのではなかろうかと心配しています。
三番町とか余土とかそのまんま書かれても松山人にしかわからないだろう…。
逆に言えば、松山人は地名と移動時間を追うだけで、尚人がどの変に住んでいるのかとか何となく判ってしまうのが厄い。郷土愛に溢れた作品といえなくもないですが、果たして。


なにぶん寡作な作家さんだけにまだ4タイトルしか発表されておらず、作品としてやや荒削りな部分もありますが、タイトルを重ねていくに従って読ませ方が上手になっていくのが感じられます。
次の作品が読めるのは何年後か…楽しみに待つ事にします。



posted by 黒猫 at 10:00| Comment(0) | TrackBack(0) | SF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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