牧野 修

携帯小説として公開されていたものを文庫化したので、文章がかなり細切れとなっていて黎明期の頃のライトノベルを髣髴とさせるものがあります。
内容の方も、どちらかと言うとヒーロー物系で、ラノベ的と言えばラノベ的であり、アニメ的と言えばアニメ的でもある。
潜死能力の設定は面白いし、脳死と死の作者なりの解釈もまたなかなかに興味深いものがありますし、なにより読みやすくてテンポが良い。娯楽作品としては非常に教科書的に綺麗にまとまっていて、多分これが初牧野作品の人ならすんなりと読めるんじゃなかろうかと思います。
しかし、牧野作品はすんなりと読めたらイカンのですよ…という牧野ファン(というか信者)にとってはどこか釈然としないのもまた事実。だって、無いんですよ。いつものあの病的なまでに粘りつく様な牧野節が。
首筋を足が沢山ある虫にのっそりと歩かれるような、あのクドい厭描写が無いんですよ。
それはそれで「読者を選ばない」と言う事なのは、重々承知しております。
ですが…ねえ。
考えてみたら、良く纏まっていたら駄目だなんて阿呆かと言うくらいに贅沢な注文な訳でして、まったく我ながらあきれてしまいますね。
個人的には生と死の狭間でのみ活動できるネクロダイバーが、突発的に現れた正体不明のダークヒーローとかではなく、国家の機関に所属する捜査員という設定が一番気に入った。
ネクロダイバーを支援する此岸要員(普通の人間)の一人、菊里さんがなんとも微妙なオタ属性持ちなのは…うん、ツッコミ待ちでせうかね?
次々と飛び出すアニメ&漫画ネタが比較的有名所ばかりなのは、きっと菊里さんなりに自重しているからだと思いたい。
きっとこの人と親しくなったら、堅気には全く意味不明でしかない死界の泥よりもねっとりとしたオタトークが炸裂するんだろうなあ…うむ、それはそれでアリだな!
一応の決着は付けつつも、続きを書こうと思えば何時でも書ける形で終わっているので、もしかするとそのうち続編が出るかも。