2009年05月19日

虎の道 龍の門〈中・下〉感想 今野敏

虎の道 龍の門〈中〉 (中公文庫)虎の道 龍の門〈中〉 (中公文庫)
今野 敏

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虎の道 龍の門〈下〉 (中公文庫)虎の道 龍の門〈下〉 (中公文庫)
今野 敏

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2.3巻と一気読みしてしまったので、1本の記事に纏めます。
物語自体は完全に一つの流れで続いていたので、1.2.3巻まとめて1つの作品として扱っても良かったかも。


この作品では「格闘技」と「武道」は別の物として描かれていて、ただ単に血沸き肉踊るバイオレンスを売りにした作品とは一線を画する、武術或いは格闘術に対する作者なりの哲学が感じ取れます。
あくまで古流の空手を追求したい英治郎の姿と、90年代以降年勃興した格闘技とその申し子とも言える凱との相克が、まさにそれ。
どちらが強いとか弱いとか言う話ではなく、かと言って道を別ったまま並んで歩み続ける事は出来ないもの。
クライマックスで英治郎と凱が対戦する事となるのは、最早必然であったといえます。

このラスト前対決の面白さは特筆もので、古流空手の英治郎は古流本来の用途…素早く無駄の無い動きで不意を衝き相手に痛打を浴びせるで凱からダウンを取るも、共に打ち合う格闘技ペースに入ってしまうと凱の強烈な一撃は英治郎の肉体に深刻なダメージを与えてしまうという危ういバランス感覚で描かれています。
それはまるで琉球の空手使いが薩摩の剣士に対峙するかのような、剣士が刀を抜く前に痛打を浴びせる事が出来れば空手の勝利、しかし一度刀を抜かれると示現流の連続した鋭い打ち込みはとても徒手空拳では捌ききれるものではなく――と言う構図に似てなくもありません。
結局勝負を決めたのは、凱の連日の豪遊で弱った肝臓を英治郎に攻められた事と言うのがなんとも。まあ弱点を責めるのは常套戦術ですけどね。

とは言え、格闘家として、武道家として己の誇りを賭けて戦う二人の姿は感動するに充分なオーラを放っていて、ちよっと涙腺に来たものはあります。
僕は誰かの死で涙を取ろうとしてもあんまり反応しませんが、ひたむきに自分の全てを賭ける純粋で気高い姿には猛烈に弱い。アレ系ゲームとかで涙腺崩壊するのも得てしてそのあたり。


面白い作品でした。「格闘もの=安易なバイオレンスもの」と言う構図を打ち砕くに充分な名作と言えるでしょう。


虎の道 龍の門 上巻感想

posted by 黒猫 at 12:48| Comment(0) | TrackBack(0) | その他の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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