元長 柾木
ひところ流行ったラノベ調ミステリー。その中でも本作品はかなりの変異種と言えます。
元長先生の作品ではヤクザガール・ミサイルハートの持つ圧倒的な暴力性に魅了された記憶があるのですが、レーベルの消滅によって続巻が出る事無く(最近コミカライズとして復活したみたいですが未読)寂しい思いをしていたので、手に取ってみた次第。
この作品、元長節とでもいうべき破天荒な暴力性は、確かにあります。
しかしそれがヤクザガールのような直截的なものではなく、迂遠なロジックの暴力として描かれているのがどうにももどかしい。
近年ロジカルに物事を語ることがブームとなっていますが、ここまで無駄にロジックを展開されてもリーダビリティを損ねるだけじゃないのか?というレベル。
そして思いっきりロジックを展開した割に、飛鳥井全死の持つ人間のメタテキストを読む能力など物語に深く関わってくる部分は論理ではなく感覚的に描かれている…おそらく、ロジカル思考ブームに対する一種露悪的なアンチテーゼとしてやっている節はあるんですけど、正直やりすぎ。
また、全死やその相方?で殺人鬼の香織(苗字)等には、アウトサイダーとかマージナルと言った二つ名があるのも、かなり狙っている感じですね。
セカイ系とかなんとか以前に作品自体が壮大な中二病釣りとなっていて、たぶん作者的にはニヤニヤしながら楽しく書いたのだと思いますが、釣り針と糸が見えてしまうと醒める。
帯には美少女を攻略云々とか書かれていますけど、それすらも釣りとしか。攻略には間違いないんだけど、ギャルゲ的な甘いものを連想すると香織君に石で後頭部をどつきまわされます。
…どうも大塚英志氏も関わっているらしくて、その面で香ばしさについては真性な部分もなきにしろあらず。
真剣に読むものでもないですが、変わったものが読みたいと言う欲求には応えてくれる作品と言えます。