うえお 久光

三束&美樹愛の逃避行後編。
生まれた時から背負わされるしがらみにがんじ絡めにされた姉と、そこから自力で逃げ出そうとした妹の宿命の対決も遂に完結。
物語としては結構起伏に富んでいて、今までに無いスケールの大きな活劇も展開され非常に面白いものに仕上がっています。
また誰かが笑えば誰かが泣くというこの世界の基本原則――等価交換の法則(笑)――をやや力技ながらもコーンウオークという闖入者の存在によって皆が笑える結末に持ち込んだのも見事。
特にハッピーエンドに至る直前にまさかの鬱エンドかとミスリードさせたのは、その後のご都合的とも言えなくも無い展開を素直な気持ちで祝福させるためのステップとしてはこの上なく効果的でした。
まったく、巧いな。
なんですが、ガジェット部分の描き方は結構言いたいことが沢山。
今回の物語の軸となる縹一族ですが、武器の売買にも手を染めていると言う事で拳銃から武装ヘリまであらゆる武器を投入して派手な戦闘?を展開してくれます。
それは別に良いと言うか、むしろそう言うハッタリは好きなのですが、作者の描写がかなりアレなのは萎えた。
例えば縹組の雑魚が持ってる短機関銃(原文まま)を数ページ後には機関銃と書き、またその数ページ後にはマシンガンと表記する統一感の無さ。
給弾ベルトがどうのこうのという描写があるのでたぶん作者的には軽機関銃の事を言いたかったのではないかと思いますが、あやふやな書き方するなら敢えて短機関銃だなんだとカテゴライズしない方が良いと思う。短機関銃と軽機関銃では使用する用途も弾薬も全然違う訳ですし。
また、ミサイルがジェットで飛ぶような表記もありますけど、どこかの「報復兵器」ならともかく大抵はロケット・モーターで推進するものですし、一番酷いのはミサイルに体を縛り付けて相手に向かって飛ぶとか、これはハッタリ云々以前にギャグとしてもどうかと思う。重量バランスが崩れて発射と同時に地面に激突、壮大な犬死にとなるのは必定。
別に表記のエラーを、専門用語ふんだんに使って書きなおせとは言いません。
そんなのやられたら読みにくくて仕方ないし、物語の興を削ぐ事甚だしいだけです。
別に短だろうが軽だろうが重だろうが機関銃は機関銃。しっかりカテゴリ別けする自信が無いんなら単に「機関銃」と書くだけで言いです。それでも充分伝わるんですから。むしろ変に専門用語らしきものを入れようとして失敗したという感じでしょうかね。
電撃随一のミリオタと思われる時雨沢先生にでもいろいろ教えてもらってから書けばよかったかも(笑)
まあ、気になるのはそう言う部分だけで、物語そのものは上に書いたように面白かったです。
しかしまだIt編は続くんですねえ。
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