Stephan Martiniere 金子 司

これは不思議なSFです。
表紙のイラストやタイトル、そしてカバーに書かれたあらすじから大抵の人は、異なる宇宙からやって来た敵と地球人との宇宙戦争ものを連想するでしょう。
ところが、いざ読み始めると…何かが違う。
確かにあらすじに書かれていた宇宙戦争の要素は物語のバックボーンとして存在しています。
しかし、本編は「世界」と呼ばれる惑星を舞台に、「世界人」と呼ばれる異星人と地球人の交流を中心にしたストーリーに終始。
もちろんただのコンタクトものなどではなく、「世界」に秘められたある秘密が異なる宇宙からの侵略者に対抗する上で必要不可欠という理由があっての交流な訳ですが、やはりどこか消化不良感が残ります。
比較的人間に近い容姿と思考を持ち(地球人類とDNAパターンも極めて近い)、独自の精神性とあらゆる事の中心に花がある文化の世界人はなかなかに魅力的な存在であり、宇宙戦争云々を考えずに読むならそれはそれで面白いと思います。比較文化論的な意味で。
例えば「世界」を舞台にしたミステリーとかだったらもっと素直に楽しめたかなあ。
世界人の精神性の設定とか、絶対ミステリー向けだと思う。
物語は3部作と言う事で、この1巻だけでは正直何が何だか良く判らないというのが偽らざる感想。
月の物体の正体も謎のまま投げっぱなしだし、この1冊で何かを判断するのは無理です。
ただ、あと2冊に関しても従来の宇宙戦争ものとは大きく異なる展開で進むらしいので、所謂宇宙艦隊戦を期待している人には不向きかも知れません。
僕は…怖いもの見たさ的な意味で気力の続く限り読んでみます(笑)