2009年02月24日

老人と宇宙 感想 ジョン・スコルジー

老人と宇宙(そら) (ハヤカワ文庫SF)
John Scalzi 内田 昌之
4150116008




基本的には非常に面白く読めたのですが、物語の主軸となっている宇宙戦争に関する部分の描写には若干物足りなさを感じたのも事実。
具体的には何と言っても、地上での戦闘がほとんど歩兵だけで進展する部分。
拠点の制圧に歩兵は絶対に欠かせない兵科ですし、この世界の歩兵(コロニー防衛軍)が装備する小火器はナノマシンで構成された特殊なブロックを消費する事で通常のライフル弾から散弾、火炎放射にミサイルまで発射できると言うとても革新的な火器となっています。つまり攻撃力と言う面だけに限って言うと一人の歩兵が現用の装甲車並の戦力を持っている事と言っても過言ではありません。
しかし、戦争は攻撃力だけでは優位に立てないもの。

例えば航空機による直協支援、戦車による地域制圧。こうした要素を抜きに歩兵だけを送り込んでも、市街地での掃討戦ならばともかくも様々な地形が存在する惑星表面を舞台にした戦いでは勝負にならないでしょう。
もちろん敵となるエイリアンの中には、地面の中を移動する者など地球の戦術常識が一切通じない相手も多く、航空機や戦車が必ずしも有用とは限らないと思いますが、しかし本編でペリーが対峙したエイリアン達は姿こそ地球人類とは大きく異なっていたとしても、その生態に関しては人類とそんなに違わない連中ばかり。
それでいながら敵味方共にほぼ歩兵だけで戦闘する展開には若干首を傾げてしまった次第。
せめてパワードスーツ位は欲しいところです。


一応は宇宙の戦士のオマージュ作品であると作者も認めている訳ですが、この生身の兵士ばかりで戦うヴィジュアルはどちらかと言うと映画版のスターシップ・トルーパーズのそれに近いかも知れません。
終盤での惑星コーラル軌道上におけるララエィ族宇宙艦隊との衝突も、なんとなく映画版での地球艦隊がプラズマ対空砲火で次々と撃破されていくあのシーンを思い出した。
悪く言えば映画やアニメ的で軽いと言う事になるのですが、反面すぐに脳内にビジュアルが浮かび上がるのは美点ともいえます。この点の評価は本当に人それぞれでしょうね。

戦争部分については物足りないものを感じつつも、老人が兵士として期間限定で若返る事ができるという設定は面白かったです。
若い肉体に記憶と意識を移し変えられた途端に言動まで若者っぽくなって来るのは、肉体が若くなっても中身は年寄り臭いままというパターンが多い日本の若返り系作品と違った雰囲気で興味深いですね。やはり文化の違いかなあ。
アメリカ人特有の奔放さというか、日本的な「年齢相当に落ち着く」と言う考えはあまり存在しないと思われる連中らしいと言えばらしい。

なお続編も出ているらしいのでチェックしてみようと思います。





posted by 黒猫 at 21:01| Comment(0) | TrackBack(0) | SF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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