Harard Stumpke 日高 敏隆 羽田 節子
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太平洋戦争中、日本軍の収容所を脱走した連合軍兵士エイナール・ペテルスン=シェムトクヴィストが偶然発見したという南洋の未開島ハイアイ群島。
長い間外界と隔絶されたその島には他の地域では見られない独自の生態系が完成しており、特にその中でも一際異彩を放っているのが「鼻行類」と呼ばれる小型の哺乳動物。
感覚器官である鼻を移動用の器官に進化させたその小さな生き物達の生物学的なアプローチのもとに生態を詳細に記したのが本書です。
このハイアイ群島は鼻行類の進化の過程を示す種が比較的そのまま生き残っていて、我々が知るげっ歯類に似たムカシハナアルキの様な原始的な鼻行類に始まって、鼻行類の中でも特に鼻を移動器官として進化させた硬鼻類や多鼻類といった変り種まで実に様々な種が見られます。
特に4本の鼻を使って歩行するナゾベームや、鼻を使ってジャンプするトビハナアルキの奇抜さは一度見たら忘れられないものがあり、生物界に於ける進化の悪戯(としか言いようが無い)にひたすら驚かされるばかり。
しかし、この奇跡とも言える生物を育んだハイアイ群島ですが、島に滞在している研究班にすら情報を知らされず行われた水爆の実験が原因で水没してしまい、鼻行類とその研究資料の多くが永遠に失われる事となってしまったそうです。
アメリカが…アメリカが…!
な〜〜〜んて、全部嘘っぱちなんだけどさ〜〜〜〜〜
ええ、この本は思いっきり嘘生物学本です。
しかし、ただの嘘と切り捨てるには余りに完成度が高く、多分生物学に関心のある人が読んでも(というかそういう人向けな気がする)充分楽しめる内容。
ドゥーガル・ディクソンの一連のシリーズが好きな人とかも確実にこの奇妙な生き物達の虜になると思います。
間違いなく20世紀最大の奇書。読むべし。読まないと損。
以前は比較的高価な博品社のハードカバーしか無く、しかも絶版で入手困難でしたが、現在は安価な平凡社版が出ているので入手は割と容易だと思います。