青色 古都

味のある挿絵に関してはひとまず置いておいて。
何だか壮大な舞台設定が用意されてはいるものの、1巻を読んだ限りでは基本的にはパニック小説だと思われます。
単細胞だけど大物かも知れない下級士族の青年ケリンが、訳ありのはぐれ者ばかりを集めた部隊の指揮官となって部隊を建て直し、近々起こるであろうエズオルと呼ばれる猛獣の大発生に伴う集団暴走(スタンピード)に立ち向かうという内容。
真っ先に思い出したのは、故西村寿行氏の傑作小説である「滅びの笛」。
最近の若い人には西村寿行氏と言っても全く馴染みが無いと思いますが、かく言う僕も氏の作品で読んだのは「滅びの笛」のみだったりします。色々と名作を書かれているので機会があれば他の作品も読んでみたいところですがそれはそれ。
とまれ「滅びの笛」と言う作品は、山梨県を舞台にした鼠の大量発生と集団暴走を描いた作品。
乱獲によって鼠の天敵が減少した事と、120年に一度の笹の一斉開花によって鼠の餌となる笹の実が大量に実った事とが重なって大量発生・集団暴走に繋がって行くという設定ですが、「ガンズ・ハート」でもエズオルの餌となる木の実が100年周期の大豊作となった事が引き金の一つとなっていて、この手のパニック小説の文法に極めて忠実な感じです。
ぶっちゃけ異世界ものという点だけがこの作品はラノベである事を主張しているものの、それ以外の点ではそんなにラノベっぽくないと言うか、ラノベ特有のハッタリが少なくて地味な感じなんですよね。
この世界の一般的な武器――マスケット銃の描写がラノベにしては微妙に細かかったりとか、そういうのが好きな人には面白いんですけど、一般的なラノベのテンプレートであるホイチョイラブコメ&異能バトルを求める人には全く不向きというか。
1巻と言う事でまだ導入編の感があり、ヒロインのミントに至ってはほとんど物語にすら絡んでない状態ですが、ミントの父親が設計したと言う禁制の新型銃とか教団が隠していると思われる太古の文明の秘密など、今後が楽しみな伏線は随所に埋設されています。
物語としてはそれなりに練られている感じがするだけに、登場人物の名前がハーブ類だったりするのはどうにかして欲しい。
脱力感が伴うので。
余談ながらこの作者の方は仮想戦記も書かれた事があるらしいですが、もともとこの作品も幕末を舞台にした仮想戦記?として考えていたものにラノベ要素を大量に添加して発表したとか。
そういう意味では珍しい生い立ちの作品と言えそうです。


