2009年07月04日

亜欧州大戦記〈Vol.1〉奇襲!ウラジオストック 感想 青木基行

亜欧州大戦記〈Vol.1〉奇襲!ウラジオストック (歴史群像新書)


対フランス戦で電撃戦が頓挫し、戦力の大半をフランスに回さざるをえなくなったドイツを後背からソ連が襲い、ヒトラーが自殺して第三帝国は崩壊。
更にソ連は勢いのままにヨーロッパの大半を解放してしまった世界。
なし崩し的に三国同盟が瓦解してしまった日本と、欧州で孤立してしまったイギリス、そしてソ連の拡大を一番望まない国アメリカが、対ソ戦の同盟を結んでユーラシア大陸を舞台に赤軍と戦火を交える壮大な仮想戦記。

考えてみれば日独伊三国同盟では唯一日本のみが自由経済を掲げていた訳で、ドイツやイタリアといった社会主義の亜流を掲げる国との同盟よりも、米英との同盟の方がイデオロギー的にはしっくりきます。
もっとも、事実ではソ連とアメリカが連合国として共に戦った訳ですから、イデオロギーなんてものも案外アテにならないものではあります。


1巻で描かれるのは、日本海軍がウラジオストックへの奇襲攻撃を敢行し、同時に陸軍が満州東部から国境線を越えてソ連沿海州方面に侵攻するまで。現時点ではアメリカはまだ宣戦布告はしていませんが、日本に各種兵器や資材の供給を行う形で事実上は参戦しているのと同じ状態です。

面白い事に史実ではソ連にレンドリースとして供与されたP-40やP-39、更にM3スチュアートなどの戦車も日本に供与されます。特に陸上兵器は日本軍のものではソ連の本格的な中戦車には全く太刀打ちできそうにないので、アメリカのバックアップは必須。とは言え、作中のソ連はドイツを占領してドイツの技術も吸収しているだけに今後どんな化け物戦車が出てくるか全く油断できない。
もっとも、ドイツとソ連の戦車は独ソ戦で磨かれ研ぎ澄まされて行った訳で、独ソ戦が行われないこの世界では精々M4を撃破できる程度の戦車までしか進化しない可能性も――それはそれで地味で嫌だ。


また、作者はP-39がなかなか好きらしく、後にこの機体に活躍の場を与えるつもりなのがうかがえます。
零戦相手にはあまり良い所がなかったP-39ですが、供与されたソ連では37ミリの火力を活かして襲撃機として使われ(これは作中世界の日本も同じ)ましたし、実は空中戦でも活躍して独軍機を大いに苦しめていたりします。
巴戦に巻き込まなければ結構優秀な機体だと思われ、後の活躍とやらが楽しみで仕方ありません。
なお作中では遠慮会釈無しに37ミリをぶっ放しまくっていますが、この機体は37ミリを連射すると燃焼ガスがコックピットに充満するという恐ろしい欠点があったらしく、考え無しに連射していると大変な事になりそうです。


あとは…ソ連軍からフェドロフM1916突撃銃が鹵獲されるシーンがあり、これが後の日本の自動小銃開発にどんな影響を与えるかも見所。
史実ではドイツは鹵獲したシモノフ自動小銃を参考にGew43自動小銃を開発した経緯もありますし、ソ連の兵器はどこまでも奥が深い。

敵はソ連ですが、むしろソ連萌えの人向け?



posted by 黒猫 at 16:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | 戦記・ミリタリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月02日

アフターマン 人類滅亡後の地球を支配する動物世界 感想

アフターマン 人類滅亡後の地球を支配する動物世界
今泉 吉典
4478860467



理由は不明ながらとにもかくにも人類が滅亡(本書の延長線上にあるテレビ版フューチャー・イズ・ワイルドは、2億年後の地球にかつて地球を去った人類――ジメッツ・スムート?――が探査プローブを降下させる所から始まるので、完全に絶滅した訳ではなさそうです)してから5000万年後の地球を舞台に、新しい環境に合わせて進化を遂げた動物達の姿をシミュレートしてしまおうと言う知的好奇心を否応なしに刺激してやまない一冊。

以前読んだ鼻行類と並ぶ、20世紀を代表する奇書と言われているアフターマンではありますが、実は割と真面目に生物学をしていて、所謂"僕の考えた怪獣図鑑"とは一線を画したものがあります。
ネットなどでは奇妙な蝙蝠の末裔であるナイトストーカー(表紙のクリーチャー)や、巨大ペンギンのヴォーテックスと言った押し出しの強い連中が好んで紹介されている為に、まるで怪獣図鑑の様な印象を持たれがちではありますが。

ドゥーガル・ディクソンさんは、現在の生物の生態や形状はほぼ完成されたものであり、何らかの理由によって特定の種が絶滅した場合、別の生物がその穴を埋める形で進化をするという考え方を基本としています。
ですから、鹿が絶滅すると鹿によく似た姿に進化した兎(ラバック)が出現し、猫科の肉食動物が絶滅すればネズミが危険な肉食獣に進化すると言った具合。
開いた穴を埋める方向に進化すると言う考え方そのものはたぶん正しいと思いますけど、姿まで絶滅種に似ると言うのはどうなんだろう。進化はそこまで律儀なものではないと思いますが、どうか。


その辺のことは置いておいて、やはりこの本一番の魅力はその味のある数々のイラストです。
ディクソンさん生物本の最新シリーズであるフューチャー・イズ・ワイルドではCGになってしまい、それはそれで色鮮やかで悪くは無いのですけど、やっぱり手描きのイラストの方が見ていて和むのは事実。
未来生物達のどこかコミカルなイラストだけでなく、各章の間に挿入されている砂漠や森林をイメージした挿絵がまた想像力を掻きたててくれて楽しい。
人類がいなくなっても地球はこんなにも魅力的で美しいものなんだと、厭世的でありながらもどこかメロウな気分に浸ってしまう。


生物学に興味のある人はもちろん、あまり興味が無い人でも充分に楽しめる一冊。
というか、むしろ必読。




posted by 黒猫 at 19:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | その他の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月30日

けんぷファー 5巻感想 築地俊彦

けんぷファー〈5〉 (MF文庫J)
築地 俊彦
4840120420




すげえ久しぶりに読んだけんぷファーだけど。
キャラクターの名前と大体の構図を思い出すのに割と時間がかかってしまいました。
特に複雑な設定があるわけでもないのに…いや、むしろシンプルだからこそ一度雑多な記憶の引き出しの中に仕舞い込むと探し出すのが大変なのかもしれません。

それはともかくとして。
いきなり主要面子集まってのお泊り会なのはオギった。とは言ってもナツルは自分が実は男だと言う事を佐倉さんには隠している状態なので、正体を隠蔽することに必死でよからぬ企みを巡らせる暇なんてある筈も無い。
もっとも、読者的には相変わらず一体佐倉さんのどこが良いの?状態なので、ナツルの焦燥と逡巡はただひたすらに滑稽なものにしか見えないのが悲しい。
メインヒロイン?が一番魅力無いってどうなのよ。いや、僕にとってのメインヒロインは紅音なんだけど。メガネ図書委員は人類の遺産(レガシー)であり、失われる事は人類にとって大きな損失である。


後半の展開はモデレーターとケンプファーの関係に踏み込むと見せかけて、その実第三勢力的な新色ケンプファーの襲来で有耶無耶になった感じ。
核心に踏み込むと見せかけてより混迷の度合いを深めていくという手法ですね。
以前読んでいた頃とは精神状態も違ってきて、今現在の感覚的にはバトっているよりも紅音や雫会長とグダグダやっている方が楽しく感じるようになって来たのですが、果たしてこの作品はどこへ向かおうとしているのか。




posted by 黒猫 at 23:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月29日

悪魔のミカタ 11巻  It/ザ・ワン感想 うえお久光


悪魔のミカタ(11)


これ悪魔のミカタなの?と首を傾げてしまうくらいに作品の雰囲気が違う11巻。

主人公である筈のコウは全く登場しないどころか(ある少年の語る"伝説"には名前だけ登場する)、アトリや小鳥遊、真嶋と言ったメインキャラクターも全く登場せず、かろうじて普段は影の薄い舞原サクラが登場はするものの、狂言回し役ですらなく、つまるところ外伝か別の作品かと思ってしまう訳です。


とは言えこの流れは前巻ラストからの「ザ・ワン」編である事は間違いなくて、いわばプロローグにまるまる一冊使ったと言う前代未聞の超展開。
しかもページ数もなかなかのもので、一般的なラノベよりは三割り増し程度のボリュウムだったりします。
うえお先生のヒネクレぶりは相変わらず凄い。

プロローグとは言え単品でも楽しめるくらいに物語の構成はしっかりしていて、和歌丘を襲ったザ・ワンの脅威を吸血鬼モノとゾンビモノを融合させ、そこにうえお風味の捻りの効いたスパイスをふんだんにぶっ掛けたような独特の味わいの群像劇で描き出しています。
ザ・ワンが意識の集合体の様な存在であり、全にして個・個にして全であるだけに、実はこの特定の主人公の登場しない群像劇的な描き方は正解かも知れません。
なにせ今度の戦場は和歌丘そのものですし、ザ・ワンにあがらう者達もまた人間の矜持という意識のもとに集合した存在でないと、この相手は一人でどうこうできるものでもなさそうですし。

うん、とか言いつつ次の巻でコウがちぎっては投げーのちぎっては投げーのやっちやう危険性も、もちろんある。なにせうえお先生だけに、読者の期待の斜め上を衝いてくるのはよくあることですからね。


面白いのは間違いなく面白い巻だったけど、次の巻の展開如何で評価はどの方向にも転がりそうだなあ。


悪魔のミカタ・魔法のカメラ感想
悪魔のミカタ・インヴィジブルエア感想
悪魔のミカタ・パーフェクトワールド平日編感想
悪魔のミカタ・パーフェクトワールド・休日編感想
悪魔のミカタ・グレイテストオリオン感想
悪魔のミカタ・ストレイキャットミーツガール感想
悪魔のミカタ・ストレイキャットリターン感想
悪魔のミカタ・It ドッグデイズの過ごしかた感想
悪魔のミカタ・It ドッグデイズの終わりかた感想
悪魔のミカタ・It スタンドバイ



posted by 黒猫 at 10:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月27日

稲妻6 感想 坂本康宏

稲妻6
坂本 康宏
4198626464



人生に絶望し、自ら死を選んだ男が巻き込まれた数奇な運命。

所謂マスコミ用語で"負け組"と呼ばれる類の人物を主人公に据えて熱い物語を展開させるのは、過去作品である歩兵型戦闘車両OO逆境戦隊×に通じるものがあります。
しかし本作品の場合は、主人公尚人に対しては、変身ヒーローであると同時にモンスターでもあるという悲劇性の高い宿命を課し、これまでの作品に比べると全体的にシリアスで重い雰囲気が漂っているのが特徴。
自分の中に潜む怪物をなんとか飼い慣らす事でヒーローと怪物との間の際どいバランスをとっているだけに、全体的に押し殺した様な筆致で描かれているのも作品にマッチしています。


大筋は昭和の仮面ライダーを意識しているのだと思いますが、(表紙のイラスト的にはハカイダーに似てなくも無い。アメリカンバイクで最終決戦に向かう姿とか、雨宮ハカイダーをイメージしてしまうなあ)モンスター化する原因が寄生虫だったり、ある島の出身者だけがその寄生虫を持っていたりと言った設定は最近の某ひぐらしを連想させるものも無きにしろあらず。
また、寄生虫が原因で変身し、腕には刃が生えているところなどバオー来訪者を髣髴とさせるものも。
実際のところその辺影響があったのか無かったのかはよく判りませんけど、SF的にはこうした元ネタ探しも楽しみの一つだったりする訳です。


ところで作品の舞台は例の如く愛媛県内なのですが、今回の作品は過去に無く地域色が強くて、他県の人には少しわかりづらいものがあるのではなかろうかと心配しています。
三番町とか余土とかそのまんま書かれても松山人にしかわからないだろう…。
逆に言えば、松山人は地名と移動時間を追うだけで、尚人がどの変に住んでいるのかとか何となく判ってしまうのが厄い。郷土愛に溢れた作品といえなくもないですが、果たして。


なにぶん寡作な作家さんだけにまだ4タイトルしか発表されておらず、作品としてやや荒削りな部分もありますが、タイトルを重ねていくに従って読ませ方が上手になっていくのが感じられます。
次の作品が読めるのは何年後か…楽しみに待つ事にします。



posted by 黒猫 at 10:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | SF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月25日

南太平洋重爆作戦―マッカーサー失墜す 感想 橋本純

南太平洋重爆作戦―マッカーサー失墜す (HITEN NOVELS)


いい加減な地図を使用してポートモレスビー上陸作戦を行ったら本当に成功してしまい、その際に鹵獲した多数のB-17Fを使用してブリスベーンを空襲するという話。

なんと言ってもあまりにあっけなくポートモレスビーが占領されてしまうのに思わず笑った。
史実では辻タンが見込みだけで無理に推し進めた4000メートル級の山が連なる魔のオーエン・スタンレー山脈を越えて陸路侵攻すると言うキチガイじみた作戦で、敵と交戦する前に完全にすりつぶされてしまった訳ですが、こちらの作品世界ではモレスビーの近郊に勢い任せに直接上陸を果たすことで、比較的(日本軍なりに)強力な火力を投入できたのが勝利の鍵みたいです。
架空世界も史実と同じく見切り発車で作戦を開始したのに、結果はまるで違うのは皮肉と言うほか無い。


鹵獲兵器には浪漫がある。
確か某大戦略でも空港や港を占領すると、そこで補給中だった敵ユニットを分捕れるシステムがあったし、パンツァーフロントの前身である某戦車戦ゲームでも擱坐した敵戦車を破壊せずにステージクリアすると、その戦車が使えるようになるという非常に男の浪漫を刺激してやまないシステムが搭載されていました。
敵の兵器を奪うスリリングさと、ポケモン的な集める楽しさ。戦争の大きな愉しみの一つである事は言うまでもありません。

米軍の様に裕福な軍隊は鹵獲した敵兵器は試験場送りにして徹底解析する事が多く、鹵獲兵器を戦場に投入したことはほとんど無いのですが、日本やドイツなどの貧乏軍隊は鹵獲したものを塗り直した程度で実戦に使用した事例がかなりあります。

ドイツ軍がフランスで鹵獲した戦車を使用し、後に様々な自走砲に魔改造した話は有名ですし、T-34みたいな優秀な戦車は3色迷彩に塗りなおしてサイドスカートを取り付けた程度でそのまま実戦に投入しています。
また、日本軍でもマレー侵攻作戦時に鹵獲したM3軽戦車をそのまま使用し、日本軍最強戦車(笑)として獅子奮迅の活躍をした話は有名。
他にもドイツ兵がソ連兵から奪ったPPsh41を好んで使用したなんて話もありますね。

そんな感じで、鹵獲したB-17を持ってしてマッカーサーのいるブリスベーンを空襲する作戦が立てられたのも、決して不自然な流れではないでしょう。
流石に何機かは本国に持って帰るのではないかと思いますけど…フィリピンで鹵獲して持ち帰ったB-17に比べるとあちこち改良されたF型だというのに、あっさり作戦で使い潰すのはどうかなあ。

あと、やはり数十機単位で奪われた機体なら、日本が実戦に使用してくることは米軍も予測しておくべきで、全く何の対策も打ってないのには驚かされた。米軍間抜すぎだろ。


仮想戦記なので若干なりとも日本軍に有利に描いている部分はありますが、あとがきでも触れているように兵器ではマクロな戦局は変わらないと言う考えには大いに賛同。
当時はまだ超兵器で大逆転という安易な仮想戦記が多かったこともあり、敢えてミクロな勝利ではマクロな戦局は覆せないというのを全面に押し出して執筆したのかもしれません。



タグ:橋本純
posted by 黒猫 at 11:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | 戦記・ミリタリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月24日

遠すぎた星 老人と宇宙2 感想 J・スコルジー

タイトルに偽りあり!
いや、有名映画のタイトルをもじっているのは判るけどさ。

1巻の、老人が人工の肉体でもって若返ってエイリアンたちと戦う話から一転、2巻はCDFを裏切ったある男のクローンから再生された一人の兵士の物語になっています。よって老人とか関係なし。
1巻の主人公であるペリー達は老人だった訳ですけど、2巻の主人公ジェレドは死者のDNAを基にして大人の姿で再生された生後1年未満の、謂わば子供。両極端な存在であるという点については共通しているかな。


色々と世界観が明かされていくのも2巻の大きな楽しみの一つ。
銀河系におけるCDFは他の知的生命による同盟関係の前ではかなり弱小勢力らしく、それ故に敵に対しても味方に対してもえげつない策謀を巡らせて自分達のポジションを守っている事、理由は不明ながらもあえて孤立路線を貫いていることなど。

更にこれまで凶悪な敵として描かれてきたエイリアン達も、姿や生態はともかく精神面では案外地球人のそれと大きな隔たりが無い連中がそれなりに存在する事が描かれます。
ララエイ族の科学者カイネンとか、その北欧染みた名前だけでなく言動も地球人とほとんど変わらない。食癖はアレだけど。
ラストの流れからして3巻ではCDFも他のエイリアンと同盟を結ぶみたいですが、一体どんな連中と組むのか楽しみではあります。

個人的には1巻のノリの方が好きですが、SFらしさという面では2巻が上かな。


ところで宇宙空間で生活できるように改造された人類って、思いっきりマン・アフターマンの宇宙人間ですよね?
本人たちはガメラにあやかってガメランと自らを称していますが…。


老人と宇宙 感想

遠すぎた星 老人と宇宙2 (ハヤカワ文庫SF)
前嶋重機 内田昌之
4150116687



posted by 黒猫 at 06:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | SF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月23日

やってきたよ、ドルイドさん! 感想 志瑞祐



アイルランドから日本の中学に転校して来たドルイドの娘シャレイリアさんが、超自然的な魔術でもって騒動を引き起こす、割と基本に忠実な作品。
雰囲気的にはフルメタルパニックの短編に近いかなあ。軍事オタクを超自然的な魔術の使い手に置き換えた感じ。

もともとライトノベルは楽しくてナンボ、面白いは正義!を基本とする僕にとっては、このあまり深く考えず流されるままにイカレた世界を楽しめる作品は非常に心地よかったです。
文章がどことなく最近の神坂一さんに近くて、かつてのラノベブームを知っている人間にはそこはかとなく懐かしい気分に浸れるのも良い。
変に気取った方向に進みつつある一部のラノベとは好対照で、久しぶりにラノベの基本形を見た気がした。

また、懐かしいだけでなく主人公の白川夏穂が程好く変態だったりと最近の流行のパターンもしっかりと押さえてあって、トータルとしてかなりポイントの高い作品と言えます。
強いて言うと極一部存在感の無い、単なる解説役のキャラクターがいるのが気になるかな…でもこれは今後このキャラの当番回を作れば済む問題なので、たいした事じゃないですかね。


基本仕様がドタバタコメディなので、作品としてのライフサイクルは決して長いとは言えませんが、続けられる限りは続巻出して欲しいです。
でもアイルランド人のシャレイリアさんが憎きイングランドに復讐する様な展開はカンベンな。
作中でお子様ランチの上に乗っているイギリスのユニオンジャック旗を忌々しげに放り捨てるシーンがあったけど、実際問題として今もまだ険悪なムードは残っているんだろうか。彼女が物心付く頃にはIRAも活動停止していたと思うんだけど。
いずれにせよこの辺の要素はスパイス程度に用いるぶんには異論はありませんが、出来ればあまりラノベでは触れないほうがいいかも。


やってきたよ、ドルイドさん! (MF文庫J)
志瑞 祐
4840124558



posted by 黒猫 at 12:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月20日

蒼穹の槍 感想 陰山琢磨

蒼穹の槍 (カッパノベルス)
陰山 琢磨
4334075673



麻薬や海賊品などによる地下経済が世界の実体経済を蝕み始めた近未来を舞台にして、蒼穹の槍と呼ばれるテロ兵器をもって世界を恫喝する麻薬王に、図らずも蒼穹の槍の設計に手を貸してしまった日本人の男女が戦いを挑むという近未来サスペンス+軍事スリラー。
大石英司先生辺りが書きそうな内容ではありますが、衛星軌道上からマッハ8の砲弾を地上に落下させてインフラ施設を狙い撃つという豪快なアイデアは陰山氏ならでは。
ミサイルでもなく核でもなく、大砲の弾というところが戦車小説の第一人者らしいです。

そこはかとなくロケット技術や弾道学の香りが漂っていて、そう言うのに反応する人にはなかなか魅力的な世界観ではありますが、一般向けとするとややマニアックかなあ。
なにせ仮想戦記やSFのレーベルではなく、一般的なミステリーなども刊行しているレーベルだけに、ミステリーの客層からはオタク臭いだペダンティックだと嫌われそうな雰囲気満載。
まあ、逆にそれが良いんじゃないかと言う僕みたいなヒネクレ者もいるとは思いますが、少数派だろうなあ。


気になった点として、柏崎原発が蒼穹の槍の攻撃を受けて原子炉が全壊するシーンがあるのですが、それによって引き起こされるカタストロフの描写が極めて限定的なのはどうなんかなあと思う。
実際には施設の職員近隣住民はもとより、風に乗って関東平野まで放射能が運ばれる事で未曾有の大惨事になる筈なのですが、そうした部分は完全スルーされていた。
この点については陰山氏は若干2ちゃんねらてきな変な思想を持っている節があるので、「なあに、かえって免疫が付くニダ!」というアレを信じているのかもしれません。
まあ、戦争描写に関しては妙な思想は含まれていないのでさほど気にはなりませんけど、どうしても偶に漏出してしまうのは仕方ないよね。にんげんだもの。

逆に言うと気になる点はその程度で、あとは終盤のまとめ方がやや駆け足だったこと以外は不満なし。むしろエンタメとしてのレベルは高いです。
ホンダロボット最強。


posted by 黒猫 at 13:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | 冒険 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月17日

軍用機ウエポン・ハンドブック―航空機搭載型ミサイル・爆弾450種解説 ミリタリー選書8 青木謙知

軍用機ウエポン・ハンドブック―航空機搭載型ミサイル・爆弾450種解説 (ミリタリー選書)
青木 謙知
4871497496



例えば大戦略シリーズの新作を買ってきてプレイをし始めたとして、登場するユニットの武装名称が"機関砲"とか"爆弾"といったそっけないものでも特に気にならない人にはこの本はあまり向いていません。
反対に、M61バルカンとかMk82爆弾とかちゃんとした名称が振られていると嬉しくなってくる人にはおすすめ。
これはそんな本です。


収録されているのは第二次世界大戦後〜2000年代にかけて実用化&実戦配備されている航空機に搭載される武装オンリー。肝心の航空機などは全く収録されていません。あくまでポンベイに収納したり、ハードポイントに吊り下げたりする武装に焦点が絞られている。
こう言うと一見地味な印象を受けますが、しかし搭載武器は現代では一番ハイテク技術が注ぎ込まれている分野であり、敢えて語弊を恐れずに言うならば現代の戦場の主役でもあります。極端な話航空機は爆弾やミサイルを戦場に運ぶキャリアーでしかない。

という訳で、それぞれの国情に合わせて開発された様々な武装が約450種類紹介された本書。武器カタログとして読むもよし、特殊兵装の開発の裏にある様々な歴史に思いを馳せるもよし。
どんな航空機のどのハードポイントに何発搭載できるかといったデータや、詳細な諸元表も欲しい所ですが、それは贅沢な要望。むしろこの価格にしては良くまとめられた本だと思います。
個人的には謎の多い中国軍機の搭載兵器にも触れられているのが好印象。
中国兵器のパチモン臭さはやっぱりいいねw



posted by 黒猫 at 10:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | 戦記・ミリタリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月14日

これならわかる! 太平洋戦争 感想 三野正洋

[図解]これならわかる! 太平洋戦争
三野 正洋
456965407X




内容も解説の仕方も非常に良い意味で教科書的。
いわゆる自虐史観なる臭いも無ければ、勇壮な部分だけ話抜粋編集して亜細亜解放の聖戦を高らかに唱いあげる事も無く、歴史的事実を極力専門用語を排した平易な文章と、判り易い図解ページとで丁寧に解説しています。
著者の三野氏は過去に紫電改最強説をぶち上げた事があって、そのせいで未だにマニアの間ではあれこれ言われている人物ではありますが、この本の場合そもそもそういった個々の兵器や戦術部分にまではあまり深く踏み込んでいないので、特にこれは!と言うほどのものはありません。

ただ、風船爆弾をあまり良く書いてないのは頂けない。確かに戦術的な意味はきわめて薄い物ではあったけど、アメリカ側は風船爆弾を使って生物兵器をばら撒かれる事や、ギャグみたいな話だけど風船に工作員がぶら下がって米国本土まで飛来し、浸透する事も大真面目に警戒してたという。(風船おじさんの浪漫がここに…)
よって、風船爆弾は戦術的にはゴミみたいな兵器ですが、戦略的には意義のある兵器なんだぜ…もっとも、米国本土に生物兵器なんかばら撒いたりしたら、間違いなく東京にもピカドンが落ちていたでしょうけど。



日頃から戦史関係の本を読んで、仮想戦記にツッコミを入れる類の人から見るとはっきり言って物足りない内容ではありますが、つい最近何かの本かブロクで、"大東亜戦争は大日本帝國が東亜解放のために悪辣なる欧米諸国に挑んだ正義の戦いである"なんて感化されちまった人には向いていると思います。
太平洋戦争を知る上での取っ掛かりとなる部分は多く、特に軍組織の硬直ぶりや戦時下での国民生活などいわゆる大東亜戦争を英雄物語として語るタイプの本ではなかなかお目にかかれない記述もあります。
ヒロイックサーガとしての大東亜戦争はそれはそれで胸のすく物語ではありますが、どうせなら歴史としての太平洋戦争も知っておくに越した事は無いと思いますが…どうか。



posted by 黒猫 at 22:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 戦記・ミリタリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月13日

戦闘員ヴォルテ 感想 谷甲州

戦闘員ヴォルテ (徳間デュアル文庫)


外宇宙における人類の敵との戦闘目的で、バイオ技術によって人工的に作り出された試作戦闘員ヴォルテが自我を持って軍から逃亡する話。
この手の兵器が自我を持つという話は得てしてターミネーター的に不気味なロボットや見るからに剣呑な自律兵器が人類に反旗を翻す展開が多いのですが、本作品の主人公にして人型兵器であるヴォルテはその姿形だけでなく精神構造も人間とさして変わらない存在で、個としての自由を求めて脱走するというのが面白い。
人間と違う点と言うと、肉体の強度と他のたいていの生物と精神を交感できる能力(これこそが一番の目玉なんだろうけど)位。


その設定からして神林長平の作品群よろしく深読み推奨作品な気もしますけど、深読みしなくても充分楽しめるのは大きな美点。
舞台がどことは明記されてはいませんが、作中から断片的に得られる情報から考察するに、ヴォルテが作られた研究施設はサハリン北部、そして彼が目指すヴァイズの故郷の街は恐らくはユーラシア大陸の反対側。
シベリアの極寒の森林や山を舞台にした逃避行はそれだけで読み応えがありますし、谷甲州先生お得意のジャンルでもある。

時に追っ手と戦い、脱走兵や密漁業者や収容所の仲間など数々の出会いと別れを繰り返しながら西を目指すヴォルテの旅は…残念ながら未完で終わるのが辛い。
一応執念深くヴォルテを追跡していた後藤大尉と、3体の量産型ヴォルテを倒した事で当面の追っ手は無くなったとは言え、移動距離を考えるとまだまだ物語は始まったばかりという感じなんですよね。
航空宇宙軍だけでなく地元警察とも大立ち回りを演じてしまっているだけに、シベリア鉄道に乗って一気に大陸の西側へと向かう訳にはいかないだろうし、苦難の旅路はまだまだ続く…筈。


航空宇宙軍史の世界観をある程度把握していたら、色々とヴォルテの今後を想像して楽しむ事も出来そうなんですけど、僕にとってこの作品が初の航空宇宙軍史なので、イメージを膨らませるに足るだけの情報が無いのが少し寂しい。
もう少し他の作品を読んで自分の中で世界観が構築できたら再読してみたい一冊です。



タグ:谷甲州
posted by 黒猫 at 15:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | SF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月10日

荒鷲の要塞 感想 アリステア・マクリーン

荒鷲の要塞 (ハヤカワ文庫 NV 162)
平井 イサク
4150401624



アルプス山中の要塞化されたゲシュタポ本部"シュロス・アドラー"に囚われた米軍将校を救出すべく、極寒の山中に降下した英軍コマンド達の戦い。
一応カテゴリー的には仮想戦記と分類しても良いのかなあと思いますが、内容はミステリーに近いものが多分にあります。特に降下した途端仲間の一人が何者かに殺害されるのを皮切りに始まる、誰が味方で誰がドイツの工作員かと渦巻く疑念。
シュロス・アドラーに潜入してからも、ミスリードを誘うが如くに二転三転するストーリーと繰り返される裏切り。誰が嘘を言っているのかすら判然とせず、つい今しがたまで仲間だと思っていた人物に短機関銃を突きつけられるサスペンスフルな展開が連続します。
終盤のケーブルカーでのアクション直前で一本化されるまでは、複雑に錯綜した登場人物の立ち位置を把握するだけでも結構大変で、何度も途中で数十ページ遡って読み返したりしました。


谷に渡されたケーブルカーでのアクションや、施設の破壊など派手なシーンもふんだんにあって見所は多いのですが、自分の場合過去に読んだマクリーン作品が「女王陛下のユリシーズ号」だけでしたので、壮大なスペクタクル的な描写がほとんど無くなっているのにやや違和感を感じたりも。どうもハリウッド映画用に書いた小説らしいので、その辺予算と尺にあわせてコンパクトに収まっているみたいですね。


いくら映画用に書いたとは言え流石にこの時代にヘリコプターは無かろうと思いますけど。実際たいして作中でのギミックとして活用された訳でもないですし。
厳密に言うとドイツにはFa223という異形のヘリコプターがあるにはあるのですが、長い胴体と左右に張り出した2基の巨大なローターなど、なかなか図体が大きい機体でしたので、ケーブルカーでしか行き来できない様な狭隘な地形で運用するには無理があると思います。しかもこの機体が実用に耐える完成度を得るのは戦後だし。
同時期にシコルスキーで実用化されたR-4は現代のヘリコプターの直系の子孫とも言える洗練された形状で運用の融通も利きそうですど、これは連合国側の話ですしね。

本当、なんでヘリなんて引っ張り出してきたんだろ…ハリウッド側の意向?



posted by 黒猫 at 10:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 冒険 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月05日

ミミズクと夜の王 紅玉いづき 感想

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)
紅玉 いづき
4840237158



刊行当時随所で絶賛されていた本作品。当時から関心はあったのですが、僕はなにぶんヒネクレ者ゆえに世間がマンセー一色だと絶対に「いやちょっと待てよ…」となってしまうのは目に見えています。
なので、世間が落ち着いて冷静に読める環境が醸成されたらその時に読もう…と思ったまま、今の今までその事を忘れてしまってましたw


で、感想。
これから皮肉交じりにも取れる所感を述べる事になると思いますが、作品そのものを頭から否定してアンチの塊になっている訳ではないという事の表明として最初に書いておきますが、この作品が面白かったかそうでもなかったかと言うと、はっきりと面白かったと言えます。
その点については全く異存なし。

ストーリーの主軸を余分なデコレーションを排して述べるならば、奴隷の不幸な少女がナイーブな夜の王(魔王)に出合って恋をして、その後優しくて人格者な騎士に出合って、色々あった末に自分が運命の人と信じる夜の王の元へと帰っていく話。
実にわかりやすいストーリーとキャラクター配置、現世的な幸せに背を向けてでも恋に走る刹那的な結末…これはまさに、紛うかたなきケータイ小説のテンプレートではないか。

さらに、物語の終盤で多用される「ありがとう」と「ごめんなさい」という情緒的な単語。
この二つの言葉は素朴であるが故にストレートに情緒に響くキラーワードあり、泣きを取りたいならひたすら連呼しておけば間違いない…という位のものです。
それを熟知した上で、逐次投入の愚を犯す事無く最適のタイミングで一挙に投入する手腕は本当に凄い。


あとがきにて作者は「安い話を描きたい」と語っています。
あとに残らなくてもいい、光のようにぱっと輝く話。高尚でなんかなくていい話。
この作品を評するならまさにその作者の言葉そのまま。自分で書きたかったタイプの話を何のてらいもなくきっちりと書き上げるとは、とても新人とは思えないプロ意識ではありませんか。
ここまで一部の隙も無く娯楽性に特化して描ける才能が素直に羨ましい。

何の雑味もなくどこまでもピュアな恋愛至上主義。作中に登場した物語を彩るあらゆるギミックが、"恋する女の子は何よりも素敵"という一点に収斂される思い切りの良さ。
この作品に対して深読みなんて愚の骨頂。
作者が徹底したプロ意識で書き上げた「安い話」には、読者も徹底して「安い感想」で応じるのが礼儀というものです。
無駄な深読みなんて作品に対するレイプ行為に等しいし、内容が浅いなんて批判は的外れもいいところ。


だからこそ僕は安い言葉で、心から賞賛したいです。
「素晴らしい!感動した!」
と。


posted by 黒猫 at 21:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月03日

ガンズ・ハート 3 硝煙の栄光 感想 鷹見一幸

ガンズ・ハート (3) (電撃文庫 (0964))



2巻の締め括りは個人的に見事だったと思います。
エズオルのスタンピードに際して、教団の禁忌を破り連射可能な新式ライフルが開発&配備された事、そしてそれによって危機を脱する事に成功した事。
スタンピードの被害で喪失した国力を立て直すために、東域国の肥沃な大地を新兵器でもって奪い取る誘惑が鎌首をもたげてきた事。
スタンピードの脅威から国を救った新型銃を製作したミントは救国の女神として祀り上げられているものの、このまま彼女の開発した銃がきっかけの一部となって大きな戦争が勃発したら…。

と、そんな緊張感溢れる〆を見せてくれた2巻だっただけに、3巻では一体どんなハードな展開が描かれるのかと期待して読み始めたとですよ。
したら、2巻の〆のくだりは無かった事にされて、古代の進んだ技術を管理独占する教団が、"懲罰"の名の下に西域国への軍事行動を開始すると言う話に摩り替わっているじゃないですか。
でもまあ、それはそれでアリかなあと思って更に読み進めたとですよ。
したら、教団側は古代の超兵器を保有しながらも徹底した教条主義で運営されているため、状況の変化に対応する能力やや戦力運用の幅が全く無いという、ありていに言えば馬鹿の集団だったというところでずっこけた。
内部情報も西域国に筒抜けだし、よくこれで何千年も世界を管理してこれたもんだ。


そんな訳で、教団との戦いはほとんど茶番劇みたいな展開が延々と続くものとなり、2巻のあの一瞬の油断が死を招く緊迫感は皆無。これはひどい。
まあ、一つ期待をするならば、今回の軍事行動で教団側が使用した多脚砲台、それに搭載されたバルカン砲の薬莢が西域国に回収されたので、それを参考にいよいよミントは金属薬莢を使用する銃を開発するかも知れません。
2巻時点で三脚に固定し、バレルに水冷ジャケットを巻くところまで進化していたので、金属薬莢の導入によって初歩的な機関銃が生まれる可能性も。
ベルト式給弾はハードルが高そうですが、保弾板を使用したオチキス機関銃タイプならまあ何とかなるかも知れません。

今回の教団との戦いでまた幾つか新兵器が開発されたし、これも東域国との大戦争に向けた準備段階なのかなあ。
ともあり派手なドンパチに期待してます。


ガンズ・ハート1 硝煙の誇り 感想
ガンズ・ハート2 硝煙の女神 感想


posted by 黒猫 at 08:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月30日

ネクロダイバー―潜死能力者 感想 牧野修

ネクロダイバー―潜死能力者 (角川ホラー文庫)
牧野 修
404352210X



携帯小説として公開されていたものを文庫化したので、文章がかなり細切れとなっていて黎明期の頃のライトノベルを髣髴とさせるものがあります。
内容の方も、どちらかと言うとヒーロー物系で、ラノベ的と言えばラノベ的であり、アニメ的と言えばアニメ的でもある。


潜死能力の設定は面白いし、脳死と死の作者なりの解釈もまたなかなかに興味深いものがありますし、なにより読みやすくてテンポが良い。娯楽作品としては非常に教科書的に綺麗にまとまっていて、多分これが初牧野作品の人ならすんなりと読めるんじゃなかろうかと思います。
しかし、牧野作品はすんなりと読めたらイカンのですよ…という牧野ファン(というか信者)にとってはどこか釈然としないのもまた事実。だって、無いんですよ。いつものあの病的なまでに粘りつく様な牧野節が。
首筋を足が沢山ある虫にのっそりと歩かれるような、あのクドい厭描写が無いんですよ。
それはそれで「読者を選ばない」と言う事なのは、重々承知しております。
ですが…ねえ。
考えてみたら、良く纏まっていたら駄目だなんて阿呆かと言うくらいに贅沢な注文な訳でして、まったく我ながらあきれてしまいますね。


個人的には生と死の狭間でのみ活動できるネクロダイバーが、突発的に現れた正体不明のダークヒーローとかではなく、国家の機関に所属する捜査員という設定が一番気に入った。
ネクロダイバーを支援する此岸要員(普通の人間)の一人、菊里さんがなんとも微妙なオタ属性持ちなのは…うん、ツッコミ待ちでせうかね?
次々と飛び出すアニメ&漫画ネタが比較的有名所ばかりなのは、きっと菊里さんなりに自重しているからだと思いたい。
きっとこの人と親しくなったら、堅気には全く意味不明でしかない死界の泥よりもねっとりとしたオタトークが炸裂するんだろうなあ…うむ、それはそれでアリだな!

一応の決着は付けつつも、続きを書こうと思えば何時でも書ける形で終わっているので、もしかするとそのうち続編が出るかも。



posted by 黒猫 at 08:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | ホラー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月27日

ガンズ・ハート〈2〉硝煙の女神 感想 鷹見一幸

ガンズ・ハート〈2〉硝煙の女神 (電撃文庫)



グレンダランの街に押し寄せるエズオルの大群を迎え撃つガンズ・ハート第2巻。
人海戦術よろしく地を埋め尽くす数のエズオルに対する悲壮な防御戦が描かれ、近年のライトノベルの流れからは大きく逸脱したものではあれど、これはこれで面白かった。

攻め手側――エズオルが類人猿程度の存在であるため、互いに知略を尽くしてという戦いではありませんが、しかしその数は下手な策略など無効化してしまうほどのもので、いくら強固な城砦に守られた都市といえど守る側に有利な点など何一つ無いバランス感が実に良い。
防御戦闘の醍醐味は悲壮感と絶望感にあると言えます。


対エズオルの切り札として、ミントの父が設計していたハーモニカ・ピストルならぬハーモニカ・ライフルを完成させるくだりは良かったのですが、そこから極々短期間でダブルアクション化され、更に水冷ジャケットを被せて三脚に据えつけて…と異常な進化を遂げるのは厄い。
黒色火薬を使っている以上銃腔内に燃えカスが溜まり易い宿命からは逃れられないので、銃身が焼けるほど連射したら弾詰まり起こすぞ…。
とは言え、ハーモニカ式が始めて登場した時に、チャンバーと銃身との閉鎖が構造上甘そうだなあと思ったら、ちゃんとその事を作中でも触れていたのには感心。
短期間でこれらの銃が開発され量産された流れには些か疑問は感じる部分があれど(むしろ急造で製造可能なノルデンフェルド砲等の方が篭城戦に似合っている)、まあそこはラノベだしと言う事で。


終盤の市街戦もなかなかスリリングで面白かったし、なんだかんだ言いながら楽しく読めました。
ラストの引きで、ミントが開発した新式銃が戦争の引き金となる可能性を示唆しているのも良かった。武器は身を守る道具あり、同時に相手を殺す道具でもあるという基本部分ですよね。


ガンズ・ハート1 硝煙の誇り 感想


posted by 黒猫 at 21:54 | Comment(0) | TrackBack(1) | ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月20日

ベン・トー3 感想 アサウラ

ベン・トー〈3〉国産うなぎ弁当300円 (集英社スーパーダッシュ文庫)
アサウラ
4086304678




気高き狼達の饗宴三度。

スーパーマーケットを戦場に変え、己が意地と誇りを拳に乗せて半額弁当争奪戦を繰り広げる漢達(女の子もいるけど魂は漢)の物語も、何故か3巻まで来ました。
昨年度のこのラノでは文句なし仏契でこの作品がトップだろと確信していたのに、こともあろうか(以下自粛)。
まあ、漫画でも何でもそうですけど、女性がとっつきやすい作品じゃないと頂点を目指すのは難しいと言う事ですね。



オルトロスが還ってきた。
双頭の猟犬の異名を持つ双子の姉妹沢桔梗と鏡が、三年ぶりに戦場(スーパーマケット)に還ってきた。
小学生の頃から狼として半額弁当争奪戦に参加し、そのキャリアは10年以上。双子ならではの連携攻撃はあらゆる狼を跳ね除け、かつて狩り場としていた町では無敗を誇った彼女たちが、新たな伝説を刻むべく還ってきた――。

と、威勢良く書きましたけど、佐藤達の街に現れたオルトロスは何故かメインの狩り場となる店舗を定めず、散発的、ゲリラ的な狩しか行わない。その割に佐藤やかつてガブリエル・ラチェットの一員として鳴らした二階堂には挑発的なアピールを行う。そんな彼女たちの不可解な行動の裏には、三年前、かつて彼女たちが狩り場としていた町でのある出来事が暗い影を落としていた、と言う話。


あとがきによると元々全編後編の分冊形態を目論んでいたそうですが、担当氏に「あはは、死ねよ」と一刀の元に切り伏せられ、泣く泣くあちこち削って何とか1冊に纏めたとの事。
そのせいかどうか話の密度にムラがあって、前半はやや冗長な印象。正直、"死神"の異名を持つ井上あせびさんはいてもいなくても物語として成り立つような…。
一応彼女から蔓延し始めた風邪によって、今回槍水先輩を戦場から降ろす=佐藤を独り立ちした狼として戦いの場に立たせるという流れは出来てましたけど、別に冥土インあせび印の風邪ウイルスじゃなくても良い訳でして。
つうか独り立ちしてようやく二つ名を貰ったと思ったら、「変態」かよ。

とは言え中盤以降はこれまでに無くベン・トーらしい、まさに狼達の物語として相応しい展開となっていました。
特に二階堂を佐藤のライバルにして盟友に据える事で漢密度が高くなったのが、この作品には幸か不幸かやたらマッチしているのが厄い。白粉が良い感じに茶々入れてましたけど、まあ、なんとなく白粉に同意できる…か?
頭では納得出来るが前立腺では納得できねぇ。


読了して最初に思い出したのは、今から10年位前のまだまだ格闘ゲームがそれなりに人気だった時代。
当時対戦におけるタブーが色々と取り沙汰されていたのを覚えています。
ハメ技は論外なので置いておくとして、順番待ちがいる時には連コインは禁止だとか、負けたからと言って台に八つ当たりする奴は屑だとかその他諸々。
その中に、強い相手に乱入されたからと言って、ゲームを放棄して席を立つのは最低の行為というのがありまして、今回の話はそれを基に物語として膨らませた雰囲気です。

と言うか、狼同士の情報網があったりとか、目茶苦茶当時のゲーセン事情っぽい。昨晩どこそこの店に○×(地元で有名なプレイヤー)が現れたとか、今度はどの店に行くと言っていたとか。
そして実際○×が来ると、その店を根城にするプレイヤーが対戦しにぞろぞろ集まってきたり…。
当時ゲーセンのバイトしていたので、そういうの幾度と無く見てきました。もう格ゲーは愚かゲームそのものから足を洗ったので、最近の状況は知りませんけど。
ラノベ読んでいて経験的な面で懐かしく感じたのは初めてだよ…。


ベン・トー 感想
ベン・トー2 感想

posted by 黒猫 at 19:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月19日

虎の道 龍の門〈中・下〉感想 今野敏

虎の道 龍の門〈中〉 (中公文庫)虎の道 龍の門〈中〉 (中公文庫)
今野 敏

by G-Tools


虎の道 龍の門〈下〉 (中公文庫)虎の道 龍の門〈下〉 (中公文庫)
今野 敏

by G-Tools




2.3巻と一気読みしてしまったので、1本の記事に纏めます。
物語自体は完全に一つの流れで続いていたので、1.2.3巻まとめて1つの作品として扱っても良かったかも。


この作品では「格闘技」と「武道」は別の物として描かれていて、ただ単に血沸き肉踊るバイオレンスを売りにした作品とは一線を画する、武術或いは格闘術に対する作者なりの哲学が感じ取れます。
あくまで古流の空手を追求したい英治郎の姿と、90年代以降年勃興した格闘技とその申し子とも言える凱との相克が、まさにそれ。
どちらが強いとか弱いとか言う話ではなく、かと言って道を別ったまま並んで歩み続ける事は出来ないもの。
クライマックスで英治郎と凱が対戦する事となるのは、最早必然であったといえます。

このラスト前対決の面白さは特筆もので、古流空手の英治郎は古流本来の用途…素早く無駄の無い動きで不意を衝き相手に痛打を浴びせるで凱からダウンを取るも、共に打ち合う格闘技ペースに入ってしまうと凱の強烈な一撃は英治郎の肉体に深刻なダメージを与えてしまうという危ういバランス感覚で描かれています。
それはまるで琉球の空手使いが薩摩の剣士に対峙するかのような、剣士が刀を抜く前に痛打を浴びせる事が出来れば空手の勝利、しかし一度刀を抜かれると示現流の連続した鋭い打ち込みはとても徒手空拳では捌ききれるものではなく――と言う構図に似てなくもありません。
結局勝負を決めたのは、凱の連日の豪遊で弱った肝臓を英治郎に攻められた事と言うのがなんとも。まあ弱点を責めるのは常套戦術ですけどね。

とは言え、格闘家として、武道家として己の誇りを賭けて戦う二人の姿は感動するに充分なオーラを放っていて、ちよっと涙腺に来たものはあります。
僕は誰かの死で涙を取ろうとしてもあんまり反応しませんが、ひたむきに自分の全てを賭ける純粋で気高い姿には猛烈に弱い。アレ系ゲームとかで涙腺崩壊するのも得てしてそのあたり。


面白い作品でした。「格闘もの=安易なバイオレンスもの」と言う構図を打ち砕くに充分な名作と言えるでしょう。


虎の道 龍の門 上巻感想

posted by 黒猫 at 12:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | その他の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月16日

旭日の鉄騎兵西へ 感想 陰山琢磨

旭日の鉄騎兵西へ (歴史群像新書)
陰山 琢磨
4054025447



前作「旭日の鉄騎兵」はどちらかと言うと"日本が世界標準の上を行く戦車を保有し、ドイツ軍と戦う"というシチュエーションを作る為に歴史改変が行われている――いわば戦場を用意する為の歴史改変であり、歴史の思考実験的な要素はそれほど濃くなかったのですが、本作品では結構大掛かりな改変が試みられていますね。

基本的には前作の世界設定をそのまま引き継ぎ、欧州大戦終結後に始まった米ソ2大国による冷戦構造に史実より主体的な形で日独が関わっていて、戦後世界の切り取りあいが繰り広げられるという形。
特にこの世界の日本はCIAもかくやという権謀術数を巡らせ、植民地地域で民族運動に火をつけて共産化を阻止したり、ソ連が持ち込んだ新型兵器を奪取してみたりと実に狡猾な国になっています。
この狡猾さを有する事は、強力な戦車を保有する事よりも50万t級戦艦を建造するよりも日本にとっては難しい事の気がする。


今回登場する日本の新型戦車10式は、上記の東南アジアでの独立扮装時に入手したSU-100の主砲を参考に開発した105ミリ砲を鋳造砲塔に搭載し、信頼性を高めたジャイロ式砲安定装置を装備したいわゆる第一世代型MBT。イラスト的にはT-55にチーフテンぽい形の砲塔を載せた雰囲気。
物語のクライマックスではこの戦車と、ドイツ側が軍事顧問団という名目で乗員ごと持ち込んだティーガーUとが中東はゴラン高原を舞台に火花を散らす事となります。
大戦型の集大成と言えるティーガーUと、第一世代型MBTである10式の対決はなかなか興味深い。

陸戦の描写はかなり洗練されてきていて戦闘時における車内での様子なども克明に描写されており、満足度の高いものとなっています。マニアックと言い換えても問題ないですかね。
履帯の擦れる音がリアリティを持って脳内で響く一作でした。


陸戦ものに関してはこの作家さんが頭一つ抜きん出ている気がします。陸戦ものの絶対数の関係で比較対象は少ないですが。



posted by 黒猫 at 08:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 戦記・ミリタリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする